メグは旅館などに泊まったことがなかったから、 暫く入口で躊躇していたが、思い切って玄関へ足を踏み入れた。 天井も柱も床も醤油を浸み込ませたような色をしているが、 帳場の部分だけ、最近直したらしく、 新しい木肌がばかに白々しい。 診療所の受附けのようなガラス戸の向こうから、 女将らしい女が、 「あなた、そんな格好で家出でもして来たの」 と胡散臭そうに、メグを眺め廻した。