夫人が帰って来るまでには、まだ数時間ある。

ミルクだけはあたえておかねばならない。

メグは粉ミルクを魔法瓶のお湯で溶かして赤ん坊に飲ませた。

満腹した赤ん坊は、メグの顔を見上げて、
涙いっぱいたまった眼であどけなく笑いかけてきた。

メグは赤ん坊のためにこの計画を中止することはできなかったが、
このまま家に置きざりにして鍵をかけて出てしまう決心もつきかねた。

奥さんも旦那さんも、何時に帰って来るかわかったものではない。

旦那さんは会社の帰りに展示会の会場に廻り、
一緒に夕食を食べようということになりかねないのだ。