「花梨!? ねぇ、私を助けて! エマちゃんが殺しに来るの!」
そう私に電話がかかってきたのは、真田君が行方不明になってからわずか2日後の夜のことだった。
電話の相手は絵茉――クラスの皆から愛されている、あの絵茉であった。
自分の片思いの相手がエマちゃんに襲われることを想像すると、ショックで倒れてしまいそうだ。
思わず、ぺたんと床に座り込んでしまう。
「何で……絵茉の元に……?」
絵茉の元にエマちゃんが向かっているということは、誰かが手紙を書いたってこと……?
そんなの嘘だ。絵茉に恨みを持つ人なんているはずないのに……。
私の中で妙な感情がぐるぐると渦巻く。
絵茉が自分からエマちゃんを呼ぶということは考えられない。
誰かがエマちゃんを呼んだということしか考えられなかった。
「……花梨? どうしたの? 何で黙ってるの?」
絵茉の不安げな様子が伝わってくる。声も震えていた。
「ごめん。ちょっと信じられなくて。……家には誰かいるの?」
「いないの……。花梨、怖いよ……助けて……」
絵茉が私を求めている――。
そう考えると私は嬉しくなった。
「うん。待ってて、今すぐ行くから」
私は受話器を置き、急いで家を飛び出した。