俺は真田睦月。
××市に住んでいる、どこにでもいる中学生である。
今日は急いで家に帰った。――“血まみれエマちゃん”を呼び出すためである。
夜、両親が帰ってくる前に面倒なことはさっさと終わらせて起きたかったのだ。
「えっと……手紙を書けばいいんだっけ」
俺は棚からメモ帳を取りだし、内容を考える。
「別に、“血まみれエマちゃん”って書いておいたらいいよな……?」
内容を考えるのが面倒になり、俺はメモに“血まみれエマちゃん”とだけ書いて郵便受けに入れた。
これでいい。これでエマちゃんが来なければ俺の勝ち。
都市伝説なんて“噂”だと確定されるし、同時に500円も俺のものとなる。
でも、エマちゃんが来たら――?
「殺されるんだな、俺」
エマちゃんが来ないことを願いながら、俺はシンとした部屋で天井を見つめ続けた。
俺がメモを書いてから、5分が経とうとしていた。
エマちゃんはまだ来ていない。
「エマちゃんは手紙を書けばすぐ現れるって聞いたし……。やっぱりまやかしだったんだな」
俺はホッと胸を撫で下ろす。
と。
………………トン。
玄関のほうから、不気味な音がした。
ラップ現象なんて初めてだ。背中に悪寒が走る。
「なんだよ……? 今更来るとか、やめろよ……」
俺は恐る恐る玄関のほうに向かう。
心霊現象がわりと苦手な俺は、リビングから玄関を覗くことにした。
「誰も……いないな……」
玄関は、無人だった。人の気配もない。
ビクビクした自分が馬鹿だった。
阿呆らしくなり、ため息をつく。
『ねぇ……私を呼んだのって……貴方よね?』
「ぅわぁっ!?」
突如後ろから優しい声が聞こえ、俺は慌てて後ろを振り替える。
そこにいたのは。
血まみれエマちゃん、その人だった。
しかし、その姿には誰だか忘れたが、見覚えがあった。
『自分自身を呼んだのね――馬鹿みたい。でも、呼んだなら遊びであっても、ちゃんと殺さなくちゃ……ね?』
エマちゃんは不気味に笑う。寒気がした。
「近づく……な」
ナイフを持って近づいてくるエマちゃん。俺は思わず退ける。
…………そうだ。
俺は近くにあった父のコレクションから、本物の銃を手に取る。
「殺られるなら……俺から先に殺ればいいんだ……!」
銃の使い方はわかっていた。俺は銃弾をセットし、エマちゃんに向かって思いきり打つ。
『ぎぐっ!?』
エマちゃんはすぐそばに近づいていた。見事心臓あたりに命中する。
一発では死なないだろう。引き続き打つ。
<パン! パン! パン!>
『ひぎっ!? ぃぎゃあっ! ぎゃぶっ!』
打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。
打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。
打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。
打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。
打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!」
…………………………。
どのくらい経っただろうか。
何で染まったのか、赤くなった部屋には、男女が二人。
男も女も、虚ろな目をしていた。
「ぁ……ハァ……」
俺はもう何も考えられなくなっていた。
目の前にある、虚ろな目をして横たわっている血まみれの“モノ”は何?
俺はここで何をしていた?
何故、視界がこんなにも“赤”い?
そんなことも、どうでもいいのだ。
………………ギッ。
「――っ!?」
再び、ラップ現象が聞こえる。
『私を殺したって――無駄よ?』
聞き覚えのある優しい声。
先程聞いたばかりの――あの声。
「エマ……ちゃん? どうして……。エマちゃんは俺の前で死んでいるはず……!」
俺は恐怖のあまり、声のするほうへ振り向けなかった。
『さぁ。楽しい時間<とき>の始まりよ……』
今まで聞いたなかで一番優しい、穏やかな声と同時に――。
俺の意識は、遠退いていった。
………………ぐちゃり。
××市に住んでいる、どこにでもいる中学生である。
今日は急いで家に帰った。――“血まみれエマちゃん”を呼び出すためである。
夜、両親が帰ってくる前に面倒なことはさっさと終わらせて起きたかったのだ。
「えっと……手紙を書けばいいんだっけ」
俺は棚からメモ帳を取りだし、内容を考える。
「別に、“血まみれエマちゃん”って書いておいたらいいよな……?」
内容を考えるのが面倒になり、俺はメモに“血まみれエマちゃん”とだけ書いて郵便受けに入れた。
これでいい。これでエマちゃんが来なければ俺の勝ち。
都市伝説なんて“噂”だと確定されるし、同時に500円も俺のものとなる。
でも、エマちゃんが来たら――?
「殺されるんだな、俺」
エマちゃんが来ないことを願いながら、俺はシンとした部屋で天井を見つめ続けた。
俺がメモを書いてから、5分が経とうとしていた。
エマちゃんはまだ来ていない。
「エマちゃんは手紙を書けばすぐ現れるって聞いたし……。やっぱりまやかしだったんだな」
俺はホッと胸を撫で下ろす。
と。
………………トン。
玄関のほうから、不気味な音がした。
ラップ現象なんて初めてだ。背中に悪寒が走る。
「なんだよ……? 今更来るとか、やめろよ……」
俺は恐る恐る玄関のほうに向かう。
心霊現象がわりと苦手な俺は、リビングから玄関を覗くことにした。
「誰も……いないな……」
玄関は、無人だった。人の気配もない。
ビクビクした自分が馬鹿だった。
阿呆らしくなり、ため息をつく。
『ねぇ……私を呼んだのって……貴方よね?』
「ぅわぁっ!?」
突如後ろから優しい声が聞こえ、俺は慌てて後ろを振り替える。
そこにいたのは。
血まみれエマちゃん、その人だった。
しかし、その姿には誰だか忘れたが、見覚えがあった。
『自分自身を呼んだのね――馬鹿みたい。でも、呼んだなら遊びであっても、ちゃんと殺さなくちゃ……ね?』
エマちゃんは不気味に笑う。寒気がした。
「近づく……な」
ナイフを持って近づいてくるエマちゃん。俺は思わず退ける。
…………そうだ。
俺は近くにあった父のコレクションから、本物の銃を手に取る。
「殺られるなら……俺から先に殺ればいいんだ……!」
銃の使い方はわかっていた。俺は銃弾をセットし、エマちゃんに向かって思いきり打つ。
『ぎぐっ!?』
エマちゃんはすぐそばに近づいていた。見事心臓あたりに命中する。
一発では死なないだろう。引き続き打つ。
<パン! パン! パン!>
『ひぎっ!? ぃぎゃあっ! ぎゃぶっ!』
打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。
打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。
打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。
打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。
打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!」
…………………………。
どのくらい経っただろうか。
何で染まったのか、赤くなった部屋には、男女が二人。
男も女も、虚ろな目をしていた。
「ぁ……ハァ……」
俺はもう何も考えられなくなっていた。
目の前にある、虚ろな目をして横たわっている血まみれの“モノ”は何?
俺はここで何をしていた?
何故、視界がこんなにも“赤”い?
そんなことも、どうでもいいのだ。
………………ギッ。
「――っ!?」
再び、ラップ現象が聞こえる。
『私を殺したって――無駄よ?』
聞き覚えのある優しい声。
先程聞いたばかりの――あの声。
「エマ……ちゃん? どうして……。エマちゃんは俺の前で死んでいるはず……!」
俺は恐怖のあまり、声のするほうへ振り向けなかった。
『さぁ。楽しい時間<とき>の始まりよ……』
今まで聞いたなかで一番優しい、穏やかな声と同時に――。
俺の意識は、遠退いていった。
………………ぐちゃり。

