「絵茉!? 大丈夫!?」
焦りながら絵茉の家のドアを開ける。
私は「お邪魔します」も忘れて、家の中に入った。
「…………」
家の中は不気味な程静かで、気がつけば全身に鳥肌が立っていた。
「絵茉? 返事してよ! ねぇ絵茉、いるんでしょ!?」
私が幾度となく彼女の名を呼んでも、返事は無かった。
嫌な予感が頭をよぎる。
「違う。私ったら何考えてるんだろ。絵茉がそんなこと……×ぬはずなんてないよね」
私はひきつった表情で笑い、絵茉を探した。
――と。
「…………?」
キッチンに何かがあるのが見えた。
私は望まなかった結末にならないことを願いながら恐る恐る“キッチンにある何か”を確かめにいく。
そこにあったのは。
「絵茉……?」
“何か”の正体は紛れもなく、絵茉であった。
彼女はうつ伏せになっていて、腹部からは赤い液体が流れ出ている。
現実逃避の時間は終わりのようだ。
嫌な予感が的中するのだ。
「だめだよ絵茉! 返事してよ! お願いだから私を独りにしないで!」
私は一心不乱に絵茉を呼び続ける。
しかし、私の願いは虚しくも彼女には届かないようだ。
「絵茉……お願いだから……」
私の目からひとひらのしずくがこぼれ落ちた。
「か……りん……?」
不意に、私の名前を呼ぶ声がした。絵茉だ。
「絵茉っ! 大丈夫!? エマちゃんは? エマちゃんにやられたの?」
絵茉が目を覚まし、私の心は嬉しさで満たされる。
「花梨……ごめんね……心配……させて……。エマちゃん……来ちゃった……。今は……どこにいるか……わからないけど……」
絵茉はかすれた声で、一生懸命話す。
その度に、腹部から赤い液体がごぷり、と音をたてて出た。
私はその光景を見ていられなかった。
「わかったから! もう話さないで! 死んじゃうよ!」
絵茉がこの世からいなくなるのは時間の問題だった。
絵茉には悪いけれど、私は少しでも絵茉と一緒にいたかった。
「うん……。でも……エマちゃんって、殺した後……その人を“食べる”んでしょ?」
「そうだった……」
忘れていた。私は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
「花梨……私はもういいから。早く帰って……」
焦る私に、絵茉は優しく声をかける。
もちろん、片思いの相手が息も絶え絶えの状態なのに、置いて帰られるはずなかった。
「花梨……私、もう疲れちゃったよ……。少し寝るね……」
絵茉は優しく微笑み、私の腕の中でそっと目を閉じた。
「………………絵茉?」
私はすぐに絵茉の異変に気づいた。
私の腕の中で、幸せそうに眠る絵茉は。
息を、していないのだ。
「絵茉……? ねぇ絵茉!?」
私の視界がモノクロに染まる。
「嫌だよ……独りにしないでよ……」
頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなっていくのを感じた。
と同時に恐怖が私を襲い、喉からは嫌なモノが込み上げてくる。
「嫌だよ……嫌だよ……」
もう何をしていいのかもわからず、ひたすら「嫌」という言葉を吐き続けるばかり。
私にはもう何も必要なかった。
「……要らない」
私なんて要らない。
絵茉がいたから生き続けることができたのに。
絵茉が救ってくれたから今の私がいるのに。
絵茉が私を笑顔にしてくれたのに。
絵茉は――私の“支え”だったのに。
絵茉は逝ってしまった。……私を残して。
家同様、“支え”がなければ呆気なく崩れてしまう。
「あぁ……っ! ぅわああああああああっ!」
私は頭を抱えてうずくまる。
私の瞳からは、ぼろぼろとしずくが溢れ出した。
止めることは不可能だった。
………………カタッ。
「……?」
突如として、私の背後から物音が聞こえた。
私は驚いて振り向く。
「…………っ!?」
そこにいたのは――。
焦りながら絵茉の家のドアを開ける。
私は「お邪魔します」も忘れて、家の中に入った。
「…………」
家の中は不気味な程静かで、気がつけば全身に鳥肌が立っていた。
「絵茉? 返事してよ! ねぇ絵茉、いるんでしょ!?」
私が幾度となく彼女の名を呼んでも、返事は無かった。
嫌な予感が頭をよぎる。
「違う。私ったら何考えてるんだろ。絵茉がそんなこと……×ぬはずなんてないよね」
私はひきつった表情で笑い、絵茉を探した。
――と。
「…………?」
キッチンに何かがあるのが見えた。
私は望まなかった結末にならないことを願いながら恐る恐る“キッチンにある何か”を確かめにいく。
そこにあったのは。
「絵茉……?」
“何か”の正体は紛れもなく、絵茉であった。
彼女はうつ伏せになっていて、腹部からは赤い液体が流れ出ている。
現実逃避の時間は終わりのようだ。
嫌な予感が的中するのだ。
「だめだよ絵茉! 返事してよ! お願いだから私を独りにしないで!」
私は一心不乱に絵茉を呼び続ける。
しかし、私の願いは虚しくも彼女には届かないようだ。
「絵茉……お願いだから……」
私の目からひとひらのしずくがこぼれ落ちた。
「か……りん……?」
不意に、私の名前を呼ぶ声がした。絵茉だ。
「絵茉っ! 大丈夫!? エマちゃんは? エマちゃんにやられたの?」
絵茉が目を覚まし、私の心は嬉しさで満たされる。
「花梨……ごめんね……心配……させて……。エマちゃん……来ちゃった……。今は……どこにいるか……わからないけど……」
絵茉はかすれた声で、一生懸命話す。
その度に、腹部から赤い液体がごぷり、と音をたてて出た。
私はその光景を見ていられなかった。
「わかったから! もう話さないで! 死んじゃうよ!」
絵茉がこの世からいなくなるのは時間の問題だった。
絵茉には悪いけれど、私は少しでも絵茉と一緒にいたかった。
「うん……。でも……エマちゃんって、殺した後……その人を“食べる”んでしょ?」
「そうだった……」
忘れていた。私は頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
「花梨……私はもういいから。早く帰って……」
焦る私に、絵茉は優しく声をかける。
もちろん、片思いの相手が息も絶え絶えの状態なのに、置いて帰られるはずなかった。
「花梨……私、もう疲れちゃったよ……。少し寝るね……」
絵茉は優しく微笑み、私の腕の中でそっと目を閉じた。
「………………絵茉?」
私はすぐに絵茉の異変に気づいた。
私の腕の中で、幸せそうに眠る絵茉は。
息を、していないのだ。
「絵茉……? ねぇ絵茉!?」
私の視界がモノクロに染まる。
「嫌だよ……独りにしないでよ……」
頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなっていくのを感じた。
と同時に恐怖が私を襲い、喉からは嫌なモノが込み上げてくる。
「嫌だよ……嫌だよ……」
もう何をしていいのかもわからず、ひたすら「嫌」という言葉を吐き続けるばかり。
私にはもう何も必要なかった。
「……要らない」
私なんて要らない。
絵茉がいたから生き続けることができたのに。
絵茉が救ってくれたから今の私がいるのに。
絵茉が私を笑顔にしてくれたのに。
絵茉は――私の“支え”だったのに。
絵茉は逝ってしまった。……私を残して。
家同様、“支え”がなければ呆気なく崩れてしまう。
「あぁ……っ! ぅわああああああああっ!」
私は頭を抱えてうずくまる。
私の瞳からは、ぼろぼろとしずくが溢れ出した。
止めることは不可能だった。
………………カタッ。
「……?」
突如として、私の背後から物音が聞こえた。
私は驚いて振り向く。
「…………っ!?」
そこにいたのは――。

