芽を開ける、その時に。

すん…と鼻を鳴らす。さっき少し喋った男の子から香った“ジューカ”の匂い。まさか、あんな純粋無垢そうな子から香るとは…。

「…珍しいこともあるもんね。」

カバンからスマホを取り出し電話をかける。3コールしたところで相手が電話に出る。

「どうも。どんな感じだった?」
〔相変わらずさ。ルーナとチコニとお喋りしてたよ。〕
「そう。…ほかは?何か、言って無かった?」
〔いや、特には。…薬もちゃんと飲んだってよ。〕
「薬…ね。まぁ、しょうがないって言えばしょうがないのよね。」
〔…私たちの責任だ。最後まで見届けよう。〕
「そうね。」
〔ああ、じゃあまた。〕
「ええ。」

画面をタップして電源を切る。不意に気がつく。

「…さっきの子、精神科に行こうとしなかった?」

後ろを振り返っても、そこに小さな影は無かった。