芽を開ける、その時に。

始まり

『東京都○○区にあるコンビニで強盗がありました。この事件による負傷者はいません。犯人は今も…』

ぷつり

在り来たりなニュースに飽き飽きしながらＴＶの電源を切る。
もぞもぞと布団の中に入り目を閉じる。
小さく溜め息を漏らしてゆっくりと目を開ける。

「ふふっ…。」

少女は小さく笑う。
目線は布団の中の暗闇だ。
少女はまた小さく笑うとバイバイと言って布団から顔を出す。
顔を出すといつの間にか黒のコートを身に纏った背高の男がいた。

「ケルットさん。」
「やぁ、小さなプリンセス。調子はどうかな？」
「ルーナも、チコニもげんきよ。」

少女のゆっくりとした口調を男は顔を綻ばせながら聞き入っていた。

「失礼、プリンセス。確かに二匹…二人も大切だか、私は貴女のことを伺ったんだ。」
「…へーきよ。おくすりものんだもの。」
「そうか、それは良かった。また来るよ。」

そう言って男は部屋から出ていく。少女はまた布団に頭を埋め笑い出す。きっと、他人には見えない何かが、少女には見えているのだろう。