この列車は恋人駅行きです。




彼は女性を魅了する甘いマスクからは想像できないスイーツには誰にも負けないこだわりと愛情を抱いている。

それはエマーソンが『人間は皆、発見の航海の途上にある探求者である。』と述べたように、未だ発展途上であり多くの可能性・希望があるスイーツの探求者がこの遠野慎一という若きパティシエであると今回の取材を経て感じた。



スイーツ特集の記事にこの文を追加し、上書き保存して印刷する。



もちろん記事の中には遠野さんから聞いた店の名前の由来のことも書いた。



「…んー、できたー!」



デスクワークですっかり固まった肩をほぐすように背伸びをする。



印刷した記事を取りに行こうかと思えば小彩が書類に目を通しながらこっちに歩いてきた。



よく見ればそれは今さっき私が印刷した遠野さんの記事だった。



「…あんなにチャラいチャラいって言ってたわりにはべた褒めしてるじゃん、スイーツ王子のこと」


「ま、確かに最初はチャラいって思ってたけど、話を聞いてたらスイーツに対してすごく真剣ですっかり見直しちゃったよ」


「……ふぅーん」



小彩は記事を読み終えるとつまんなさそうにデスクの上に書類を放り投げた。