「…で、ではここのお店のことについて伺います。
こちらのお店、Premier Amour(プルミエ・アムール)とはフランス語で"初恋"という意味だとお聞きしたのですが、お店の名前には何か由来があるのですか?」
「そうですね。
せっかくなので特別に南条さんには教えちゃいますね?」
遠野さんは人差し指を唇にあててから一度店の方へと戻っていった。
遠野さんがいなくなったところで一息つく。
話を持っていくのがうまくてほとんど遠野さんのペースに持っていかれてる気がする。
もしや既に心を鷲掴みにされてる?
「…いやいや、それはないない!」
椅子の背もたれに寄りかかって天井を見上げ、少し背伸びをしていると遠野さんが戻ってきて慌てて姿勢を正した。
「…これを食べてみてください」
「これは……ガトーショコラ?」
向かいに座った遠野さんを見ると、遠野さんは微笑みながら首を縦に振った。
スイーツにはそこまで詳しくないけど、ガトーショコラって確かチョコレートとかココアパウダーを使って作ったケーキよね?
早く食べてと遠野さんの目が訴えているのでいただきますと言ってそのガトーショコラを口に運ぶ。



