この列車は恋人駅行きです。




裕臣先輩が持ってきた飲み物を飲みながらさっきの謎の行動とは裏腹に、遠野さんはどんな質問にも坦々と答えていく。



仕事モードの遠野さんを一言で言えば、できる男といったところ。



「元々こうしてご自身のお店を出したいという気持ちはあったんですか?」


「ありました。
修行を積んでいつか世界で認められるパティシエになって、世界中の方を僕のスイーツで笑顔にしたいとずっと考えていました」


「そうなんですね。
ではその夢が叶って今は満足してらっしゃいますか?」


「いえ。まだ満足まではいってませんね。
もっとたくさんの方に知っていただいて、もっと僕のスイーツをたくさんの方に食べていただけるように努力してます。

そのための一歩として今回のkomuraさんの取材を受けさせていただきました」


「…は、はぁそうですか。
ありがとうございます……」



ニコッと笑う遠野さんの笑顔がとにかくチャラくて曖昧な返事になってしまった。



しかもなんだろう。
そこら辺のチャラ男とは違って異性の心をガッシリと鷲掴みにしてくるようなこのスマイル。



華ちゃんは確実に鷲掴みにされそう。



気を抜くと私まで鷲掴みにされてしまいそうだ。



でもここで遠野さんのスマイルにやられてしまったら取材できるものもできなくなってしまう。