「こんにちは」
店に入ると遠野さんはお客さんと楽しく話していた。
あの笑顔だけは王子さまって感じなのにな。
本当はチャラ男という残念さ。
世の可愛い女性を甘いマスクで騙しているということを記事に書きたいくらいだけど、書いたら私が職を失ってしまう。
「…いらっしゃいませ。
店主はただ今マダムの対応中ですのでこちらにどうぞ」
「きゃっ!ひ、裕臣先輩!?
いきなり後ろから声かけないでくださいよ…!」
遠野さんを見ていたらいきなり背後から声を掛けられ、思わず肩を揺らした。
というかきゃっ!と私が言うなんて、私にもまだ女性らしいところがあったんだと自分にも少し驚く。
内心驚きながら裕臣先輩を見ると、その先輩も目を丸くしていた。
「お前が"きゃっ!"なんて…お前も女だったんだな」
「先輩…来世まで呪いますよ?」
自分で踊ろうならまだしも、他人に言われるとなんだか釈然としない。
特に裕臣先輩に言われると腹立つな。



