澄み渡る青空




のどかで、平和な城下町の風景





そしてーー




『ぐっきゅるる〜』

「お腹…空いたなぁ〜」


もぅ、一週間近く何も入れていないお腹の、ヘルプを求める声が鳴り渡る。



「だれか〜助けて〜」



晴れの昼空、道のど真ん中で、行き倒れになっていた自分。周りの人は、チラチラ見ているか、知らん顔して終わる。



「はぁぁああああ…」



人生最大級のため息をつく。

毎回こんな感じで、1日通して、繰り返す。もぅ、イヤになる程わかってきた、現実の残酷さ。

このまま、餓死して死んじゃうんじゃ無いのかなと思うと、少し涙が溢れてくる。







「あの〜すみません、通行の邪魔なんですけど〜」


突然上から、ややひねくれ気味の声がした。

いつの間にか、自分の隣には、肩を露出させた服を着、饅頭によく似た帽子を被った少年がたっていた。


饅頭…考えただけで、お腹が鳴りかける。



「あ〜すみません、邪魔したくて、ここに転がっているのではなくですね、ただ〜…」


「ただ〜?何ですか〜?」


『ぐっきゅるる〜』


饅頭が頭から離れず、大きなお腹のヘルプが鳴り響きわたった。


最初は、キョトンとしていた彼だったが、次第にこちらの状況を把握したのか、肩を震わせ爆笑していた。


「なに〜?君、もしかしなくても、行き倒れな感じ〜?」


「だっ…だったら何ですか!」


お腹のヘルプを聞かれたこと、そして、それを笑われた事で、顔を真っ赤にして精一杯の反発をした。つもりだった。



ひょいっと、何かが自分の手元に投げられた



「これって…」



笹の葉に包まれたもの。それは…


「かしわもち…!」


「ちょうどね、土産で貰ったんだけど、食べれなくて困っていたんだ…って、なんで号泣してんの?」


「あぁ…いや…すごく、お前いい人だなって…」



ありがとう、ありがとう、神さまですか、この少年は…!


「じゃっ、オレ行くとこあるんでね
〜、また行き倒れになるなよ〜」



また、倒れた時はよろしくお願いします〜。という言葉はしまいこんで、彼に手を振り見送った。




いい人だったなー、と浮かれ考えていたそんな時、町の人たちが、ザワザワとし始めていた。


「おい、たった今天竜寺で、辻斬りがあったそうだ」


「本当かよ!その話!」



辻斬り…?



ほんの数分前に起こったようで、まだ、少数の人しか話をしていない。しかし、少しだけ、胸騒ぎがした。



天竜寺…?



「あの…、天竜寺って…?」


「知らねえのか?この道真っ直ぐ行った所にあるお寺さ」


通行人の男性が、指をさし教えてくれた。


ふと、嫌な予感がよぎった。


先ほどの少年が、歩いて行ったのはそのお寺の方角だった。