風が気持ちいい。

緑の木々がゆれる。

俺、雨芝青波は山奥に引っ越してきた。

俺も母さんもぜんそく持ちだからだ。


運び込まれる荷物を眺めていると、

家の横の大きな木の後ろに女の子がいるのが見えた。


近くの子だろうか。

俺は駆け寄ってみた。


「えっと…近くの子?
ここに越してきた雨芝青波っていいます
…よ、よろしく?」

女の子はびっくりしたのか、

警戒するような目でこちらを見てきた。

「……お隣の…稲荷こんです。
こんでいいから。」

かなりの美少女だ。

オレンジのかかった金髪で、

毛先のほうはすこし茶色くなっている。

瞳も黄色くて、

……なんか獣…っぽい?


「えっと、何歳?」

「16…今年高1」

「同い年だ ……えっとこの辺のこと

まだよく知らないから…よろしく!」


女の子……いや、こん、だっけ。

こんは嬉しそうに微笑むと、

「うん!4日後からから学校だから、

明日いろいろ教えてあげる…!」

と言った。

そして家に帰っていったんだけど…………


辺りを見回しても、お隣さんらしき家は

どこにもなかったんだ。




次の日。

こんが俺の家を訪ねてきた。

「青波いますか?」

いきなり名前呼びかぁ。

ちょっと、胸がたかなっていた。

「青波、いろいろ教えるから来い。」


こんと外にでて、歩く。

「今日はこの辺の地図を頭に叩き込め!」

そう言うと、俺の頭をパシパシと叩いた。

ちょっと背伸びして叩いてるのが可愛い。

そう思い、こんの足元を見ていると、

「……ッ!?お、まっ、何見てんだこの変態ィィ!!」

頭を叩いていた小さな手は、握りこぶしになっていた。

足見てたんだよ!


少し歩くと、神社があった。

「お稲荷さんをまつってる。
獣宮神社っていうんだ。
夏はここでお祭りがあるぞ!」

「ふうん。今年もやるんなら行きたいな。」

こう言うとこんは、

「絶対来いよ?
この辺りの住人は原則全員参加だ。」

とにこにこした。

「ついでに言うと」

こんがふわふわの尻尾を揺らして言った。

「俺の家はここのご神木だ。」

ふぅん、こんは一人称俺なんだ。俺っ娘ね!

………………………………………………………ん?

え?あれ?

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

俺は絶叫した。

だって、だってこんの頭には金色の狐の耳が、
お尻なんか、ふわっふわの尻尾がはえてる!!

「俺は稲荷こん!
ここの神社の神様で、狐っ娘だ!」

もう、こんのいうことは嘘とはいえなかった。

証拠はこんにはえてるんだから!