天国の涙

「舞!」


私が___の問いに答えようとした時、聞き覚えのある声が聞こえた。

元気な男の子の、声。


「一輝君ッ!」

「早く、帰ろう!お前の帰るところはここじゃない」


そう私に言い、腕を掴んだ。


___がいるのに、ここが帰る場所じゃないの‥?
じゃ、私の帰る場所は一体‥?


「早くしないと皆、待ってる!」


それから一輝の言う、『皆』とは誰の事だろう?

聞きたいところだが、そんな状況じゃない。

___に、まだ答えてない。


「ちょっと待って!___に、まだ答えてないの、質問の‥」

「無理して答えなくてもいいのよ‥‥?」

「舞はきっとどっちも選びません!!」


え!?一輝君!?


「舞は運命を受け入れてます、だから今更そんな事言っても選べないと思うんです。
それに、俺、信じてるんです。舞はいつか声が出せるようになれるって」


言い切って満足そうに___に笑いかけた。
___はとても驚いている様子みたい。



そうだよ!!迷ってる場合じゃないよ!

声が出せるって一輝君のおかげで希望持てたじゃん!


「その通りだよ。信じていれば私は声を出せるようになれる。だから、選べない。
‥‥ゴメンね」

「いいのよ、立派になったわ、舞」


そう言って、私をまた撫でてくれた。

隣にいた一輝君にも撫でた。
彼は顔を赤くしながら笑っていて、照れている様子みたい。


「頑張るのよ、舞」

「ありがとう!!」


___は微笑んで消えてしまった。

何だっただろう‥‥。なんで___が?

それに、一輝君の事は謎だらけ。



だけど、自分の意志がしっかり持てたと思う。

きっと、心が強くなれた。

これも一輝君のおかげだ。
あそこで一輝君が来てなきゃ私は‥‥‥。


「ありがとう、一輝君」

「ええ?何がだよ!」


まだ照れているのか顔が赤い一輝君に笑いかけた。


「‥やっぱ舞の笑顔はいいな」

「え?なんて言った?」

「別に‥っ」


「え、知りたい!」と言ったけど教えてくれなかった。


「とにかく、これからも前を向いて、笑ってほしいんだ!」