何もすることが無く、暇だったので窓から外を見たら、私と同じくらいの男女がいた。
きっと『あの事故』さえなければ、私はあの子達みたいに普通に学校に行って、普通に恋愛して、普通に勉強していただろう。
そんな普通が凄く羨ましかった。
そんなことを考えてたら自然とため息をついていた。
もしお母さんがいたら「ため息ばかりしてたら幸せが逃げるわよ」と言ったかも。
でもね、お母さん、私の幸せはとっくに逃げたよ。
なんて言ったら、きっとお母さんは困った顔をするだろうな‥‥なんて。
‥‥あ、安藤さんが来るかも。
「舞ちゃん、検査の時間よ。
具合は大丈夫?悪くない?」
私の担当の看護婦さんの安藤さんが微笑みながら聞いた。
私はコクッと頷いた。
「良かった。それじゃ、行きましょうか」
再び頷いた。
そして紙に「いつもありがとうございます」と書いて、見せた。
「ふふっ。何改まっちゃて。どういたしまして」
多分、この光景を誰かが見てたら「口に言えば良いじゃん」と大体の人が思うだろう。
それが出来るものならしたい。
‥‥‥私は『あの事故』のせいで声が出なくなってしまったんだ。
