どこからどうみてもいい女だった。自分で言うのはなんだけど。
恋人に会うためにお洒落をする、その行為はあくまでも自分のためよね、っていつも思う。それで笑顔が増す。自分に自信をもてるようになる魔法の儀式なのだ。
男がそれに気がつかなくても、いいって思えるのだから―――――――――いや、やっぱりちょっとは気がついて欲しいけど。そんでもって褒めて欲しいけど。
カラン、とまた音がしてドアが開いた。
振り返ったそこには、私の愛しい男。
「お待たせ、会議が長引いた」
正輝が息を弾ませながらこっちへと歩いてくる。
・・・・わお、いい男。私はにっこりと微笑んだ。ちょっと遅れるかもって走ってくるところが素敵。乱れた髪もそそるし、ネクタイも直してあげたくなる。・・・まあようするに、彼は彼ってだけでオッケーなのだけれど。
「マスター、ビールお願いします」
隣に滑り込んだ正輝がそう注文して、やっと私に笑顔をくれた。
ってか、まずは女の全身を見なさいよ。そして褒められるところは最大限、大げさなくらい褒めろっちゅーの。私は笑顔のままで、心の中でそう呟いた。もう、本当に鈍いんだから・・・。
ビールとジン・トニックで乾杯をする。
「仕事お疲れ様。無事に終わって何よりだけど、大成功だったらしいな」
「お疲れ様。そうなのよ、自分でいうのもなんだけど、素晴らしい成果よ」
お皿にストーンチョコやチーズを盛り合わせて出してくれたマスターが、ああ、と言葉を零した。



