『仕事が終わったの。無事に成功したよ。ねえ、いつなら空いてる?』
そんなメールを打ったのは二日後の深夜。
そして、朝起きると同時にメールの着信に気がついた。
で、待ち合わせしたの。
場所は、正輝の会社の近く。いつもの、そして懐かしい、あのバーで。
カラン、とドアの鐘が鳴って、ダウンライトに支配された店へと踏み出した。
「いらっしゃいませ」
「今晩は」
真っ黒のスーツに蝶ネクタイ。魔法使いみたいな風貌をしたマスターが、にっこりと微笑んでくれる。
私も勿論顔中の笑顔で頷いた。
嬉しかったのだ。すごく久しぶりにきたこのお気に入りの店で、いつものカウンター席、それに静かな音楽も照明も店中を満たす香りも全部が。
お客は他には誰もいなかった。それも素晴らしい。
「喉渇いてるの」
「すぐに」
すでにマスターは作り始めていたようだった。いつもよりも素早く、私の為に作られたゴールドのキラキラ光る素敵な飲み物が出てくる。



