大体あたし、こんな趣味じゃないんですよね~。そう言いながら、田中さんはおおぶりのピアスも外しだす。
趣味じゃないって・・・いや、別に私、真似してねって頼んでないんだけどね。呆然としながらも、私は心の中でそう突っ込んだ。
「・・・なるほど、これが田中さんの素なんだな」
田島君がそう呟いた。牛田辺さんが哀れむような目を田中さんに向けている。
「ねえ、田中さんもしかして、梅沢さんの彼氏にまでちょっかいかけてたの?」
牛田辺さんの質問に、田中さんはケラケラと笑った。ケラケラと!今までみたいな、手で口元隠してうふふふ~って笑いなんかじゃなく!
「うん。憧れの先輩にプレゼント買いたいんですけど、手伝って貰えませんか~?ってプッシュしたの。わざわざ待ち伏せしてさ。でも今は時間ないからって言われちゃって、こっちの時間を無駄にしちゃった~」
くねくねと体を揺すり、またもや出現させた可愛いこぶりっこの姿に、亀山と私が仰け反った。
・・・そうか、と合点が行った。あの夜の繁華街。亀山と飲みに行く途中でみた二人の姿、あれは正輝を待ち伏せして買い物に誘うこの子だったのか!
憧れの先輩、憧れの梅沢さんの為のプレゼント選びにって彼女がいったのなら、正輝が田中さんに好印象を持った理由も判るってものだ。あの鈍い常識の塊男は、ああいい子だな~って思ったんだろう。言葉通りに受け取って。目の前の女の子がまさか自分を狙っているなどとは思いもせずに。
私はまだ仰天中だったけれど、ようやく納得できたような気持ちになって、頷いた。そうか、つまり・・・やめるってのはそういう事を含めた今までの行動を、ってことなのね、って。



