run and hide2~春の嵐~



 ・・・もしかして、観察は終わり?もうオールコピーしちゃったってことなのかしら?だったらもう平和な日々が戻ってくるの?私が外見のイメージを変えたので、今では二人とも違った個性になっているし、もしそうならつつくのは面倒くさいし、もうそれでいいって思えるんだけど―――――――

 私は仕事が終わった解放感も一気飲みしたビールの影響もあって、かなり陽気に田中さんに話しかけた。

「へーい、ヒナちゃん、飲んでる~?ちゃんと食べなきゃダメよ、まだ成長期なんじゃないの?」

 隣から、亀山が突っ込んだ。

「いやさすがに成長期は終わってるだろ」

「喧しいわね亀。例えよたーとーえ。彼女はあんたよりかなり若いんだから」

 田中さんは変な顔をした。笑ってるような笑ってないような、微妙な表情。ただじいっと私を見詰めてくる。既に酔い始めていた私は、その前からの異常なテンションによってそれすらも平気だった。

「何何、何か私の顔についてる~?ってかタバコ、いい?」

 ひょうきんにそう言ってバッグを漁っていたら、前からドン!と音がした。

 ビックリして顔をあげる。

 テーブルの上は一瞬静かになり、亀山も、田島君も、牛田辺さんも驚いた顔で見ていた。

 チームの新人を。

 音は、田中さんがジョッキをテーブルに置いた音だった。彼女はいびつな笑顔を見せると、いきなり首をぐるんと回して言ったのだ。

 蓮っ葉な言い方で。

「あぁーあ、もうやめよっかな。疲れちゃった、これ以上やってても何も期待出来そうにないしい~」

 って。