くくく、と小さな笑い声がして、前を見ると正輝が笑っていた。
「了解、とにかく、翔子がギリギリのところにいるってのがよく判った。気持ちに余裕が出来るまでそっとしとくよ。原因の一部は俺だろうけど、それはまた翔子が楽になってから埋め合わせする」
私はガバっと顔を上げた。
「メールも電話も控える。だから、多忙が終わったら連絡をくれ。美味しいものでも食べに行こう」
「・・・正輝」
・・・・今、嬉しい言葉を、私、貰ったような―――――――
つまり、彼は私のこの状態を許して、しかも黙って待っててくれるってこと、よね?逃げまくった私へ文句も言わず、なんなら謝罪すらして、許してくれたってことよね?
仕事が終われば―――――――正輝と素敵でラブラブな夕食。
・・・よっしゃあ!!
頭の中で、巨大なくす球が華やかに割れた。
ガタンと音をたてて、ゆっくりと正輝が立ち上がった。彼は朝日を背中に背負っていて、それはまるで後光のようだった。・・・凄いわ正輝、あなた、ついに神様にまで昇華しちゃったの―――――――・・・
恋愛フィルターが両目にかかって正輝の格好良さがいつもより6割増しになり、夢中かつ呆然と見上げる私に、彼が言った。
「俺も仕事に戻る。悪かったな、朝っぱらから。翔子のイベントがうまく行くように祈ってる」



