「だからプライベートでバタバタしたくないの!簡単に言うとこういうことなのよ。ねえ、言いたいことはあるだろうし、あなたに我慢を強いているのもわかってる。でも私には耐えられそうもない“あの女”との戦いは、イベント修了後にしたいの!」

 正輝は椅子に寄りかかった。

 真面目な顔はしていたけれど、怒ってはいないようだった。私はとりあえず、彼のその表情に安心する。良かった。そんなこと俺が知るかよって言われたら、立ち直れないところだった。正輝はそんなこと言わないと思っていたけれど、人間はいきなり変化することだってあるのだ。

 私はそれをよく知っていた。

 彼は私の落ち着きない指に気がついて、苦笑する。

「タバコが欲しいんだろ?吸ってもいいよ」

「・・・いいの」

「ジン・トニックも欲しいんだろ?ここにはないかも知れないけど」

「大丈夫よ、我慢する」

 ってか折角我慢しているのにその素敵なアルコールの名前を出さないでくれ!私は半眼になってメニューたてをにらみつけた。

 イメージの中では、崖っぷちでピンヒールを履いた片足でバランスをとっている感じなのだ!つまり、超必死。勿論タバコも酒も欲しいに決まっている!だけど今は朝日が燦燦と差し込む健全な喫茶店のモーニングタイム、タバコも酒も必要とするには早いことだって嫌ってほど判ってる。それに、そのタバコは吸わずアルコールにも弱い愛しい男の前なのだ。

 あったとしても、飲めねーよ、それに吸えねー。