正輝は頷いた。

「翔子が本気であの子を・・・あの子がしたらしいことを嫌がってるのは判った。それは俺の認識が違っていたと思う。・・・それで、俺は?あのレストランで置き去りにされたのはそれが原因だとしても、それからも避けられているのはどうしてなんだ?」

 俺は、謝ったよな?そういいながら正輝が私を見詰めている。

 ・・・確かに、たしか~に謝ったけどさ。私はあの夜の疲労感を様々と思い出してため息をついた。だけど、ああ、この人全然判ってねーんだな、と思ったのは言わないでおいた。

 今は泣けないのよ!あの夜のことまでひっくり返したら、この素晴らしい化粧が崩れる羽目になる!キャット目になるように慎重に引いたアイラインの苦労を思い出すのよ私!

 だから違う理由を披露した。

「あの子があなたを狙ってるから」

 ま、これだって正解なわけだし。

 ん?と正輝が首を捻る。

 ・・・ああ、悪気がないって本当罪よね。タバコが欲しくて指がテーブルの上でウロウロする。だけどタバコを吸わない正輝の前では禁煙しようって恋人になって以来決めていたし、今だってまだ恋人なわけだ。だからここは耐えなくては。

「あの子は私に憧れて、真似をする。その彼氏も欲しくなる。本当ところのあの子の狙いは知らないわ。だけど、問題はそこじゃあないの」

 ドンと私はテーブルに拳を押しつけた。

「今は、仕事が、忙しいのよ!!」

「――――――」