さて、私はどうするべきだと思う?

 思っていたことを正輝に全部ぶちまける?

 いやいや、それはまだ駄目よ。だってそれには必ず涙が必要になるだろうし、今の私にはそんな体力はない。というか、今日の午後からのために体力は是非温存しておきたい。

 そんなことを考えながら人気のないことで有名な喫茶店(つまり、コーヒーがまずくて人気がない)へ正輝をつれて行き、ビタミン接種のための生絞りオレンジジュースを注文して(出入りの生命保険営業に教えて貰った)向い合った。

 そして正輝を見る。

 あまり磨かれていない窓から入りこむ朝日が彼の整えられた黒髪にあたる。眼尻の皺、それに鼻筋。グレーのスーツとブルーのネクタイ。私はまた身体の奥底から意志のかたまりが湧き上がってくるのを感じた。

 オー、ガーッド・・・。

 眩暈がしそうで額を抑える。

 何ていい男なの、今すぐネクタイを引っ掴んで引き寄せて、ディープなキスをしたい!ううん、落ち着け私、勿論そんなことしないけど・・・まあとりあえず、今この場所では。

 悶々と想像を膨らませては悶えている私の前で、落ち着いたらしい正輝が言った。微笑を浮かべて。

「えらく変えたんだな、髪型も、アクセサリーも。・・・翔子に似合ってるよ」

「―――――」

 ・・・うーきゃー!褒められた!神様ありがとう!思わず両手をバタバタと振り回しそうになってしまった。