「ちょっと行ってくるわね~。皆今日も一日宜しくね!」

 そう言いながらバタバタと自席に戻り、鞄とジャケットを引っつかむ。おう、と亀山が返事を寄越して、私はふと顔を上げる。

 そこにはいつものチームメンバー。だけど雰囲気がいつもとは違う。珍しく厳しい顔をした田島君。窓際の席では、仕事に没頭する牛田辺さんと――――――――仏頂面の田中さん。珍しく私の方をみずに、マシンガンのようにキーボートを連打している。

 ・・・・・何、言ったのよ、亀山。

 だけど今は時間がない。

 私は険悪な雰囲気のチームを見なかったことにして、フロアーを飛び出した。

「お待たせ」

 エレベーターまでかけていくと、正輝がちょっと笑った。

「ようやくまともな会話になった感じだな。どこ行く?」

「人気のないとこ」

「うん?・・・何すんの?」

「正輝を襲うの」

 は?そう言いながら彼が真顔を私に向けた。私はエレベーターを呼びながら、苦笑してみせる。

「冗談よ、そんなわけないでしょ」

 実は8割方本気だったけれど、そんなわけにはいかない。

「あまり愉快な話じゃないし、時間もないの」

「ああ、えっと・・・うん」

 私が逃げずに来たことに安心したのか、さっきまでの戦闘モードの消えた正輝がエレベーターに乗り込む。私はお腹にぐっと力を込めて彼の後に続いた。

 覚悟、決めたわよ。