田中さんも諦めない。相変わらず怪訝な顔をしたままで、しつこく私を追いかける。

「ええと私は朝一アポがあるから行くわね。あー、今日も一日頑張って頂戴!」

「離せ梅沢~!!」

 ここで私は暴れる亀山をようやく解放し、ドアの開いたエレベーターに突進する。うしろから亀山の悪態をつく声と、田中さんの声が追いかけてきていた。

「お、お疲れ様です~!梅沢さーん、あたしランチ待ってますね~!」

「あ、私は遠慮するわー!」

 大声でそう言いながら、閉のボタンを神業連打しまくっていた。

 こんな感じ。エレベーターの中に言わせた他のフロアーの他社社員はドン引きして私を見ていたけれど、そんなこと痛くも痒くもねーわ。逃げなければ!それが私の使命なのだと思おう。だって、心の平安、そしてイベント大成功の為にはそうするしかない!

 そして別のある日には。

「梅沢さーん」

 と田中さんが寄って来たら、予め用意してあった伝票を押し付けて言った。

「これ、経理に出してね」

 また彼女が、

「梅沢さーん!」

 ときた時には書類を押し付けて「これ本社にファックスで」。

 そしてまた来たときには私はにっこり微笑んで、ダッシュで廊下を駆け抜けた。

「ネイチャーコーリングよおおおおお~!!」

 別に尿意なんかないんだけどね。

 実際は、屋上にタバコを吸いに行った私だ。