例えばある日の一日はこうだった。


 朝、慎重に正輝のメールを見ないようにして出勤し、ビルの入口で私を待つ田中さんを発見したからわざわざビルの裏側に回って守衛さんに頼んで入れて貰った。

 そして階段を使ってオフィスまで上がり、田中さんのいない間にメールのチェックや書類の準備をババっとする。それから一目散に駆け出し、待つのを諦めて上って来た彼女とエレベーターホールで出会いそうになった時には、同じく出勤組みの亀山をひっつかまえて壁になって貰った。

 それは田中さんに見付かってしまって(残念!)、彼女は嬉しそうにかけてくる。

「梅沢さん、亀山さん、おはようございます~!」

「・・・はよ」

「あ、おはよ~・・・」

 その間、私は無駄にデカイ亀山の体を盾にしてホールを移動しながらエレベーターへと近づく。

 田中さんが怪訝な顔で(多分ね。見てないから判らない)、どうしたんですか?と聞きながら覗き込もうとしてくるのを亀山の体で阻止する。つまり、亀山の体を両端から掴んで、田中さんが動くたびに同じように動いたわけだ。

 露骨?だから何だってのよ!必死なんですこっちはもう!

「おい梅沢~!何の真似だよ離せこら!俺はトーテムポールじゃねえ!」

「トーテムポールならもっと役に立つわよ!動かないで」

 がっしり亀山を捕まえたまま、私と田中さんはぐるぐると周囲を回る。

「ああ!?こら梅――――」

「うるさい亀、ケチくさいこと言わないでよホラ」

「??う、梅沢さん?あの・・・?」