「え?だって偶々のことで・・・それに夜は夜で仕事持ち帰ってて、気がついたら2時越えてたんだよ。だから寝てるだろうなってメールもしなかったんだけど」

 正輝はそこそこモテたのに、歴代の彼女とは短期間で関係を終わっている。それは一重にこの鈍さにある。女心を理解できないし、何が悪いのかも理解できない。判ってる・・・私は、判ってるはずだった。

 だけどチクショー!!イライラする~!!

 もう一度、私は深呼吸をして気持ちを抑えた。

 ここはお店だ。それもお洒落で居心地の良さをアピールしているイタ飯屋。他のお客さんの雰囲気まで壊すのはしたくなかった。

 正輝が首を傾げた。

「あの子、何かあるのか?」

「まあそうとも言えるわ」
 
 パンが運ばれてきて、私は一度言葉を止める。ウェイターが遠ざかるのを見てから、口を開いた。

「あの子・・・田中さんは私の外見をコピーしつつある。髪型、服装、靴やバッグも。それが不快だし、それにあなたに会いたいという。それも不快よ。男友達に関する相談なら亀山はどう?って聞いたら、社外の人間がいいんです、て言ったの。でもどうして正輝なのよ?他に男は沢山いるでしょうに!」

 彼がフォークを置いた。

 それからマジマジと私を見て、困惑した顔で言った。

「落ち着けよ翔子。あの子はお前に憧れてるんだって言ってたよ。本当にそうなんだろうなって思った。昨日の夜偶然会って話した時にも、お前のことを言ってたよ。真似は度が過ぎればいい気持ちではないかもしれないけど――――――」

「ええ、不快よ」