でも、その一瞬で十分だった。

 がっつり目に入ってしまったのだ。

 夜の中、まだまだ元気な繁華街で一緒に歩く二人の姿。
 
 うちの新人と―――――――――あれは、正輝。

「―――――――」

 ・・・は?

 私は目を見開いて、そちらを凝視した。

 結構な距離に人波まであったけれど、一目瞭然だった。すぐに判った愛しい男と悩みの種の新人。彼らの丁度横には最近進出してきた居酒屋があって、そのギラギラした入口の照明で、二人の表情までがハッキリと判ってしまったのだった。

 田中さんは手に小さなバックを持ち、正輝を見上げてにこやかに笑っている。正輝も話をしながら微笑んでいる。私に見せる、あの笑顔で。

 どちらも仕事帰りの姿のようだった。正輝の濃紺のスーツ。そして、私に似た格好をした、田中さんのピンストライプのスカートスーツ。

 私の頭の中で文字がぐるぐると回りだす。

 ・・・・え?どうして二人が一緒にいるの?田中さんが帰宅したのは6時の話。今は10時半で――――――――もしかして、今日は二人は一緒にいたの?正輝は今晩の予定は何て言ってたっけ?いやいや、そんな話はしてない。私、今晩の予定は聞いてない―――――――――・・・・・

 ぼーっとしてしまった私の肩を亀山が指先で叩いた。

「梅沢」

「え?」

 ハッとして、私は亀山を見上げる。