「お疲れさまです!」

 よろよろした足取りで、それでも田島君は鞄をひっつかんで速攻で出て行く。あの顔は恐らくそろそろプロポーズする彼女との待ち合わせがあったのだろう。明日は彼、休みの予定だったし。多分、田島君の休みはそのまま取らせてあげられると思うけど。

 まだ見ぬ田島君の彼女、許してやってくれ。私は心の中で合掌した。ほんと、チームの皆で頭下げるからさ。

「・・・ああ、ヘビーだった・・・」

 亀山がそのデカイ図体をだら~っと壁にもたれかけさせて呟いた。この男にしては珍しく馬力を出して頑張ったせいか、いつもよりも生気のない顔をしている。

 全く、何て顔してるのよ、私はそう言って笑う。亀山は私の投げたゴミを掴みなおして投げ返してきた。

「梅沢、腹減ったなー・・・。どっか付き合う?」

 おお、珍しく亀山からのお誘い。この男は仕事能力はあるが社交性は限りなくゼロに近い野郎で、私が誘わなければ(それもかなり強引に)一緒に飲みにいくなんてことはないのに。

 よっぽど疲れて、上司にムカついてるんだろう、それが判ったから、私は立ち上がって伸びをしながら頷いた。

「よし、行こう。気分変えたいわ」

「腹減った・・・」

「アルコールとタバコが必要よ!」

「俺は飯だけでいい」

「このヘナチョコ野郎~」

「イカレスモーキー女」

 つい、何だと!?と威嚇しかかる私を華麗にスルーして、行くぞ~っとヤツはさっさとフロアーを出てしまう。くそ、逃げ足は本当に早いわね・・・。とりあえず私は、亀山の椅子を蹴り飛ばすことでウサを晴らした。