私は問題を少しでもやっつけたということに自信をもっていたから、今晩は久しぶりにマスターのお店にも行こうと決心する。

 そうよ!どうして私が遠慮するのよ、あそこは私の馴染みなのに。田中さんがいたって問題ないわ、気に入らないならあの子を追い出してやればいいのよ!・・・ええと、とにかくそんな心持でいけばってことだけど。暴力はよくないわよね、うん、暴力は。

「よし!」

 私は自分に気合をいれて、屋上をあとにした。

 そうと決まれば鞄をもって早速退社しなくっちゃ、そう思ってヒール音も軽やかに自分のフロアーに戻る。

 頭の中に素敵なゴールドのジン・トニックを思い浮かべ、2杯目を飲んだあとで注文するつもりのぺペロンチーノも思い浮かべ、そのにんにくの香りも脳内に広げたままで、気楽にドアを開けた。

 ――――――――ら。

 珍しくヘッドフォンを装着していない亀山が、腕を組んでブース前に立っていた。

 仏頂面で。

「梅沢、緊急事態だ。今晩は残業決定な」

「―――――――」


 ・・・・・・くそ。