あの席は、私のなのに~!って腹も立った。理不尽だと判っている。でも店に入ったらそれを態度に出してしまいそうだったので、その時の私は走って逃げたってわけ。
・・・で、その日は素敵なアルコールを泣く泣く諦めたのだ。
別の日に恐る恐る行ったときは田中さんはいなかったけれど、マスターがにこにこして私の安堵をぶち壊しにしてくれた。
「田中さん、よくいらっしゃいますよー。あのかた本当に梅沢さんに憧れてらっしゃるのですね。嬉しそうにあなたのことを話してます」
ひきつった笑顔だったと思う。
・・・で、その日以来店には行ってません、と。
さっきすい始めたばかりのタバコはもう短くなっている。私は携帯灰皿を取り出してそれに突っ込み、また新しい一本を取り出して火をつけた。
ドランカーでスモーカー。お酒は正輝も飲むからやめないけれど、タバコは最近禁煙を頑張っていたのだった。
だけどそれもおじゃんだ。だってこのストレス。どうしたらいいの。畜生、一体私が何をしたって言うのだ!
ゆっくりと夕日がビルの彼方に沈んでいく。
ここ最近は正輝とのデートも出来ずにいて心がすさんでいたのだ。それもあって、今の私には戦闘能力がほぼないと言っていい。
以前の私なら、本人につっかかったに違いないのに・・・。ちょっとあんた、いい加減にしなさいよって詰め寄って、睨み付けたはず。それか、自分が全く違う姿に変身するか。
「――――――おお」
くわえタバコのままで、ポン、と手を叩いた。



