まいにち、まいにち。


ずっと。


女の子は、たまごさんをあっためました。



....わたしが、お母さんの代わりになるんだ....。




思えばそれは、贖罪の思いがあったのかもしれません。
でも、それよりも、かわいいひよこさんを見たい、そういう気持ちが
強かったかもしれません。


来る日も、来る日も。



女の子は、たまごさんを大切に
手のひらで あっためました。











たまごさんを暖めはじめてから、20日め。


その日も、いいお天気の日でした。



今日は、たまごさんをつれて......


朝のお散歩に行こうと



手のひらで、そっとつつんで

朝陽まぶしい、草原へと歩いていきます。



さく、さく、さく.......。



あの日と同じように。


泉のそばへと。



あの日、たまごさんを拾った草むらも

もう、違うお花が咲いていて
小鳥さんのお家も、見当たりません....。




.....ことりさんのお母さん....。


どこへいっちゃったのかしら。



わたしが、ここで。お母さんの代わりをしています。
だから、安心してね、お母さん!。


そういう願いを込めて、女の子は口笛を吹きました。


そのメロディは軽やかに、高原の風とハーモニー。

泉の水も、ゆらゆら。



「あら....?」



てのひらのたまごさんが、ハーモニーといっしょに揺れています。



ちいさく、ヒビがはいって。




ぱっこり。






ひよこさん?


女の子は、にこにこしてたまごさんをみました。





ふわり。




たまごさんから出てきたのは、すらり、とした

絵本でみたような、透明な天翅が背中に生えている....


女の子は、びっくり!でも.....目をまるくして


ふわふわ浮いている様を、見つめています。




...なんていったかしら....?この子。


女の子は、必死に絵本を思い出します。