「おお!有さん、似合ってます!」

更衣室を出れば、いきなり誉めてくるものだから、少し照れくさい。文句を言おうにも、オーナーの前で余計なことは喋れない。

いそいそとモップがけを始める有を察して、彼女はオーナーや有を黙々と監察医し始める。

オーナーは料理の下ごしらえで忙しく、奥の方で仕事をしている。これならば小さい声なのならば平気だと思い、少し腰を屈めてソファーに座る彼女と視線を合わせる。

「お前……、名前なんていうんだよ。」

細い小声で、区別つけくいんだよ。

「ほ?ああ、記憶が全部吹っ飛んじゃってわかんないです。そうですね……幽霊ちゃんとでも、お呼びくださいな。」

「……幽霊ちゃんって……。」

「わかりやすくていいじゃないですか。ポチとかでもいいですよ。」

「お前なぁ……。」