「は?」

いきなり顔色の悪い不気味な女が、自分が見えるのかと訪ねられても、意味がわからない。

有は適当にはぁ、まあ、と返しそそくさとその場を逃げようとするが、「あ、えっとちょっと待ってください。」

彼女はパーカーの裾を掴むと、淡々と喋りだす(ほぼ一方的に)。

自分はなんらかの理由で亡くなってしまい、生前の記憶は一切覚えておらず、絶賛さまよっていた所、直接触れられ会話ができるのは有だけ。

つまり彼女は幽霊だというのだ。

「本当にお願いします。絶対にご迷惑はおかけしませんし、ただ話相手になってほしいだけです。」

眉一つ動かさず、告げる彼女はさっきまで感じていた不気味さとは、また違う雰囲気でとんとんと話す。

「ほ、本当に幽霊なのかよ……。」

「本当ですって。どうしてもと言うのであれば。」

彼女は此方側に走ってくる自転車を邪魔するように、ぽつんと立つ。有は「おい、危ねぇぞ……。」
しかし、自転車は目前に彼女をすぅっと通り抜けていったのだ。

「ほら、言ったでしょう?貴方以外は私に触れられないって。」