捨てておいてって意味で渡したのに、
「……藤島グッズゲット」
とか言って途端に表情を明るくさせてるから、その紙コップ一杯分出血させてやろうかと本気で思う。
捕まりたくないからぐっと堪えますけどもね、紙コップ半分くらいまでには。
にっこり微笑みながらきつく握りしめた拳を早川に向けたところで、慌てたように冗談だってと言い訳された。
なんだ残念。
「……あー、それにしてもいよいよ明日だな」
「まあどんな茶番劇を繰り広げてくれるのか見物ではあるよね」
「俺ら委員会ばっかで結局劇最後まで通して見れたことねーもんなー」
早川の言葉に頷いて、足を組み直す。
ここまで特に大きなトラブルもなく、よく皆やってくれたものだ。
私なら私みたいな人間に命令されてもボイコットする。ましてや劇なんか。
バカな奴らで助かった。扱いやすい。
不意に早川と目が合って、そいつは人懐こく笑う。
「藤島のおかげで全部上手くいったな、頑張ってくれてありがとう」
「……は? 頑張ったのも足引っ張ったのも全部あんただと思うけど」
「そこは頑張っただけにしとけよ」
音楽室で、最初からこいつが真面目に机の中探してくれていれば、私が余計なことをせずに済んだのに。
後日外国製の高そうな石鹸くれたから許したけど。あれ良い匂いだった。どこで買えるんだろう。毎月プレゼントしてくれないかなー。

