「……私は川端さんのこと、友達だなんて思ったことない」
そんな存在、いらないって思ってる。
どうせいつか、皆私を嫌うじゃないか。私といると疲れるでしょう。傷つくんでしょう。
無理してまで一緒にいてほしいだなんて思わない。
私だって、無理したくなんかない。
川端さんは、ついに堪え切れなかったのかぼたぼた涙をこぼして、それを拭うこともせずに不細工に顔を歪めた。
「……ひっ、ひどいよあーちん!」
「……」
「バカ! おたんこなす! あーちんのママでべそ! あんぽんたん!」
「……悪口が低レベルすぎて言い返す気にもならないんだけど」
「も、もう知らないんだから! あーちんの友達なんかやめてやる、バカバカバーカ!」
だから最初から友達なんかじゃないって言ってるのに。
私に溜息を吐かせる暇を与えることなく、川端さんは走り出してうちの教室を飛び出して行った。
……なんだったんだあれ。
ちらりと教室の扉から顔だけを出して廊下を覗けば、こちらを振り返りながらやけにゆったり歩く彼女がすぐに見つかって、慌てて顔をそらされた。
……めちゃくちゃ追いかけて来てほしそうな顔してる。
まあ放っておいたほうがいい。
……ほら、こうやっていつか川端さんが私から離れていくって、前から思っていたし。予想通りの結果だ。
どうせまた喧嘩になる。関係を断ち切るのが少し遅くなってしまっただけで、元からこうする気だった。
明日から私の静かな高校生活が保障されたのだ。なんてめでたい日なのだろうか。

