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早川への怒りも収まらぬまま教室に戻り、扉の陰からそっと中を覗けば、クラスメイト達はまだ体育館で練習中らしい。
一層顔を青くさせたボス猿しかいなかった。
どうやって返してやろうかな、と思いつつ、手元の封筒に視線を落とす。
普通に手渡しで返したら、根性の曲がったボス猿のことだ。私が隠してたんだと誤解しそうでウザい。
まず見つけたの早川だし。
……やっぱり奴に押し付けてくればよかった。でも今更戻る気にもなれない。ていうか顔を合わせたくない。
それよりも、絶望的な表情でいるボス猿が面白すぎて、もうちょっとこのまま観察してるのもありだなって気もした。
手間かけさせられた分、私にはたっぷり楽しむ権利があるはず。
ていうか音楽室の机に忘れたとか、それだけでバカすぎて笑える。さっさと気付けよ。
……まあ、ここで見ててもしょうがないし、返してやるか。ボス猿の顔って3秒見てたら飽きるし。
封筒を曲げて、スカートのポケットに無理やり押し込んでから教室の扉を開けた。
勢いよく音を立てたためか、びくっと体を震わせたボス猿が、怯えた表情でこちらを振り返る。滑稽滑稽。

