偏食系男子のススメ【完】





「藤島!」




早くも帰りたくなった頃、早川が弾んだ声で私を呼んだ。


振り返れば、窓側の壁に置かれた、棚の前にいるそいつが私に手招きする。




「この下んとこ、なんか挟まってる」


「……え!?」


「封筒みたいなやつ」


「そ、それだ多分……!」




慌ててそこまで行けば、床に頬をつけて棚下を覗きこむ早川が嬉しそうに言った。


げげげ。よくそんな汚いとこに顔つけられるよ。私は絶対したくない。



ちょっと引いた目で見ていれば、早川は隙間に手を入れて、目的のものを引っ掴もうと奮闘している。


ボス猿はこんなとこに落としたの? 漫画じゃあるまいし気付かないものなのだろうか。




「……まだ取れないわけ?」


「……や、狭くって、腕がつっかえて進まね……」


「使えないなもう」




確かに、早川の腕は細く見えるけど、見た目よりは筋肉質で男子らしく、それなりに分厚いようで、肘のあたりでつっかえていた。


どいて、と彼を押しのけて、私も早川がやっていたように床に頬をつけて、棚の下を覗きこむ。



まったくボス猿ふざけんな。絶対高級洗顔クリーム買わせようそうしよう。