「あーちいいいいいいいん!」




――そして、どうして面倒事というのはいっぺんにやってくのだろう。



早川から走り逃げるべくタイミングを計っていたところで、癇に障る甘ったるい声が後方から聞こえて、うんざりしながら眉を顰めた。


振り返らずとも誰だか分かる。分かりたくないけど分かる。



隣には不思議そうに首を傾げる早川、後ろからは私に迫りくる川端(カワハタ)さん。


高2にもなって、相変わらずの姫カットと耳より高い位置でのツインテールは、見ててイタい。


すごい勢いでこっちに抱きついてこようとする川端さんから身をかわせば、勢い余った彼女は地面に顔から倒れ込んでいった。痛そう。




「……誰?」




彗星のごとく現れ、泡沫のごとく視界から消えた川端さんを、早川がドン引いた目で見ている。


川端さんも多分お前にだけはそんな目されたくないだろうよ。




「……知らない人」


「あーちん酷いよおおおおおお!」




即刻立ち去ろうと一歩進めば、がっしりと川端さんに足首を掴まれてしまった。


チッ。面倒なことになった。



むっくりと起き上がった川端さんは、恨みがましく私をいっちょまえに睨んでくるから、その額にちょっぷを食らわせてやる。生意気。