「配って」
指図すれば、早川は大人しく皆の机にそれを乗せていく。
ざわつくクラスが落ちつくのを待って、私も自分の分の冊子をぺらりとめくった。
「多分、誰もアイディアなんか出してくれないなと思って、昨日私が考えてきてあげました。わざわざわざわざ考えてきてあげました」
なんでアイツあんな偉そうなのよ、と呆気にとられているボス猿に褒められたけど、悪い気はしない。
独裁者、プリンセス藤島って呼ばれる日も近いかもしれませんね。照れるーイカすー。嘘。そんなダサいあだ名で呼ばれた日にゃ死にたい。
なんて一人でくだらない夢を膨らませていた私の横に戻ってきた早川は、
「さすが藤島」
と羨望の籠った目で見詰めてくるからウザい。
けど、思い通りに上手くいってよかった。準備した甲斐があった。
そんなことないだろうけど、もし誰かが他の案を出してたら、この私がわざわざ台本を作った努力が無駄になるところだった。
でも予想通り、他の案は出なかったし、ボス猿も良い感じに私を煽ってくれたし。作戦通り。
「――って、ていうか、白雪姫って何よ!?」
なんて悦に入っていれば、金切り声で叫ぶボス猿に耳を冒される。
「うるっさいなあ。静かに話もできないの?」
「は、はあ!?」
あ、しまった。面倒だから普段は言い返さないようにしてたのに。

