流すように言ってクスクス笑う彼は、その手を私の背から頭へと滑らせて髪の毛を軽く撫でた。



私はそれを、振り払わない。




「……藤島、俺と付き合って」




改めて聞いた何度目かのそれは、急に特別な言葉のようにズンと心臓に重みを持って落ちてきた。


そっと熱いままの顔を上げれば、こっちを見下ろしていた早川と至近距離で目が合って、彼はふにゃりと笑う。



……もういいか。ムカつく。どうしてあんたが余裕そうなのよ。


なんだか気が抜けて、何も言わずにゆっくりと早川の背中に両腕を回して、軽くしがみつく。慣れてないせいでぎこちない動きが自分でやってて恥ずかしい。



私の髪を撫でる早川の手が一瞬びくりと止まって、その後に強い力で抱きしめられた。




「……俺もう絶対、藤島しか愛せない」




喉元まで出かかった、調子に乗るな、の一言は、耳元で呟かれたその声のせいでどこかへ消える。



早川は、私以外を愛さない。



……バカじゃないの。


――けど、そんなのもきっと、悪くはない。そろそろ信じてあげてもいい。


飽きもせずにカーッと熱くなった頬を隠すために、早川の胸板に顔を埋めた。


その後に少しだけ顔を上げて、だらしのない笑みを浮かべる早川のことを軽く睨みつけることは忘れない。




















「……そんなの、知ってる」


「藤島その顔エロすぎ」


「死ね」




fin.