偏食系男子のススメ【完】





「観覧車でのアレ……を私、ほんとは、死ぬほど嫌だっては、ちょっとしか思ってなくて、……そ、そのことに、ビビったっつってんの!」


「……え?」


「……今まで散々拒否ってきたけど、……あの時は別に、首つって消えたいって思わなかったほどには、……嫌じゃなかった」




語尾がふにゃふにゃ揺れて、ちゃんと声として早川に届いたかは定かではない。



――真面目に考えて。早川と付き合ったとして、そうしたら私が私でなくなってしまう気がして怖かった。



そうなのだ。嫌じゃなかったんだ。早川に手を握られて、全然嫌じゃなかった。それどころか、もっと多くを求めてしまいそうになる自分に気付いて驚いたのだ。


同時に、いつか離れていってしまうことを想像して傷つくのも、そんな面倒な目にあうのも嫌だと思った。


なのに結局は、言わずにいられなくなってしまった。


自分の中に、理性では抑えきれないほどの感情が芽生えたことを、認めたくない。認めたくなかった。



顔は爆発するかもって不安になるくらい熱くなるし、喉は焼けるように痛くって、緊張のせいで目には涙が溜まっていった。