……みたいっていうか、なんだっていうんだ。なんでもないでしょ?
その先の言葉に気付かないふりをして、ランチバッグにお弁当箱を仕舞い徐に立ち上がった私を二人が見上げる。
「藤島、どっか行くの」
「……今日飲み物忘れたの。自販行ってくる」
無性に喉が渇いたから。
っていうのは建前で、本当はこれ以上二人と話していたくないから。
早川がなんだっていうのだ。最近、あいつの話をしてると私は私らしく上手く喋ることができない。それが悔しくてしょうがない……!
いってらっしゃーい、と呑気な声に見送られて、空き教室を出てすぐの階段を下る。
毎度思うけど、自販機が1階の玄関前の廊下のにしかないっていうのは大変な問題じゃないの。
各教室の隣に備え付けてくれれば楽なのに。わざわざ階段の上り下りが面倒。予算? そんなの知るか。
……まあ、都合の悪い会話を避ける口実としてはちょうどよくもあるのだけれど。
辿りついた自販機の前で、特に迷うことなく缶のお茶を購入した。
ランチバッグも持って出てきたし、このまま真っすぐに教室に戻ってしまおうかなと考えながら、玄関の前を通る。
「早川先輩!」
……早川?
と、なんだか聞き覚えのある名前が聞こえて反射的に立ち止まってしまった。
……ああどうして私はまた、こんなに名前だけで反応してしまう!
自分の無意識の行動が無性に恥ずかしくなってくる。
聞いたことのない女子の声。緊張の色が濃く、上ずってるけど一生懸命な声。

