外靴から上靴に履き替えながら、何か言われるかな、とか意識の全ては早川に向いていた。


今更素直に話してやるもんか。そんな都合よく。もう絶対振り回されない。




「……じゃね、藤島」




と、思ってたのに。



予想外に、当然といえば当然なのかもしれないけれど、ふわりと笑った早川はさっさと私を置いて廊下を歩き、階段を上って行ってしまった。



……なに、あの笑顔? 普通に笑ってた。


同じ教室なのに。先に行っちゃうんだ? ……そりゃあそうか。もう早川は私のことなんてとっくに忘れてる。



時間が経てば経つほど、その分早川は離れて行く。



今までのことはなかったことになっていく。



分かっていたのに、どうしてこんなに私、……なんだか息がしづらい。