あら亜希ちゃんったら。またお茶目な発言しちゃったわ、子ども相手には気を遣っていたつもりだったんだけどなあ。アハハ。
でもだって美織が有り得もしないこと軽々しく言葉にしちゃったのが悪い。
これも教育教育。説教説教。
クソ生意気なガキを黙らすのには十分凄みのある声だったようで、言った瞬間だんまり口を閉ざした美織の表情にちょっと笑えた。
暫くお互いに無言だったけれど、少しすると放送がかかり、迷子のお知らせが流れた。
美織の名前と見た目の特徴、私たちが今いる場所に母親を呼ぶ内容。
それをじっと聴いていた美織は、唇を噛みしめたまま静かに地面の一点を見つめている。
「……偉かったじゃん」
ぼそっと呟けば、ゆっくりと顔を上げた彼女が、私の方を見上げた。
……早川は、美織が親の再婚相手と一緒にいるのが気まずくて、反抗して逃げてきたって思ったみたいだけど。
それも間違ってないのかもしれないけど。
「……再婚相手といるのが気まずくて、逃げてきたわけじゃないでしょ、あんたは」
――それはなんとなく、美織の考えとは違ったんじゃないかなとも思う。
目を合わせるのは面倒で、前を見たまま言葉を続けた。
辺りを少しだけ見回すけれど、この子の親らしき人間が近づいてくる様子はない。
早く迎えにでもなんでも来てくれと思う。

