「……どんな人? あんたのママ」
尋ねたのは気まぐれ。特に興味が湧いたわけじゃない。誰が他人の家庭の事情なんぞに首を突っ込むもんか。
私はその場から立ち上がらないまま訊けば、ふと振り返ったコドモと目が合う。
コドモだけど、コドモはコドモなりに思うことがあるのだろう。
予想に反してしっかりと、自分を持った強い目をした美織は、暫く黙った後に口を開いた。
「……いつも忙しそうにしてる。朝から夜までシゴト。なのにいつも笑ってるの」
「へえ」
「……ママの結婚相手も良い人だよ。……オジサンだけど」
ぼそりと話す彼女の声に嫌悪感は含まれていないから、多分本当に良い人なんだと思う。
結婚に反対しているわけでもなさそう。
――それなのに母親の元から逃げてきたの? なんで?
「よし早川、迷子センター行って放送かけて来てもらって。美織の親呼んで」
「なっ、だ、だからそれはヤダってゆってるじゃん!」
「あんたがケータイで連絡しないなら私らが動くしかないでしょ。ほら早川、さっさと行け」
「えー、でも……」
この期に及んで渋った表情の早川の脛を蹴りつけて、早く、と微笑んでやれば血相を変えた彼は、光の速さでこの場を去っていった。

