***
「置き去りにして逃げよう」
真顔で告げた私に、早川は失笑を浮かべた。
「いやあ、さすがに小学生置いて行くのは……」
「あいつがトイレに行ってる今しかない、ほら早く」
「……またお母さんって大号泣されてもいいの藤島」
ぐっと言葉を詰まらせた私に、早川は
「さすがの藤島でも子どもには敵わねんだな」
なんてちょっと楽しそうにするからムカつく。
……ていうか、本気で笑いごとじゃない。
この1時間、隙をついては逃げようとする私に目ざとく気付き、その度に大声で泣き叫ぶものだから泣きたいのはこっちの方だ。
どうして私がこんな目に……!
同じくお父さんと呼ばれた早川は満更でもなさそうにへらへらしてたから余計に腹が立つ。
どっからどう見れば私たちが親子に見えるというんだまったく。ありえないっつーの。

