「いいよ、書く。その代わり、その鞄、ちゃんと川端さんに届けてよ」


「了解! 超楽しみ!」




……だから、そういう風に言われても困るんだって!


馬鹿じゃないの、って言葉は声になる直前で言い淀んで喉の奥に引っ込んでいった。



ウキウキしながら川端さんのクラスへ引き返していく早川の後ろ姿を眺めながら、ふうっと溜息を吐く。



……私、おかしいかな。遊ぶ約束なんかするなんて。


いや、おかしくないおかしくない。正当な理由があるんだし。


相手が早川じゃなくともその申し出を了承していたはずだ。


おかしくない、おかしくない。はず。自分でもよく分からないや。



――7月上旬、なんだか急に暑くなって浮かんだ首元の汗を拭った。