「ねえ、知ってる?」
「……」
「私、暴力なら超得意」
ひっと短く声を上げた彼女は、慌てた様子で私の手を振り払い、泣きそうな顔で数歩後ずさった。
大分ビビらせてしまったようで、何か言いたげな表情の割に、その口はパクパク空気を吸うように動くだけで、声は発せられない。
あーんおバカさんなんだからー。私みたいなか弱い乙女が暴力なんて物騒なことできるわけあるかー!
冗談に決まってるのにい、そんなに怖がっちゃってー。うふ。
本当は数発その化粧でべたべたな頬を殴ってやりたいところだけれど、問題起こして揉めるのは面倒だから、してやんない。
「言ってること、分かるよね?」
「……は、……は……い」
「もう川端さんのことは放っといてやってよ。じゃないと私も、翔くんも、あんたらのこと放っておけない」
「……ひ……っ」
「分かったなら、とっとと戻って」
さっきまでの威勢はどこへいったのか、大人しくコクコク頷いた二人は、顎で廊下の方を指した私からすぐさま走って離れて行ってしまった。

