機嫌を直したらしいチナミは、モエカと呼ばれたブスから鞄を受け取ると、汚いものでも見るかのようにそれをつまみ上げ、クスクス笑った。
「また翔くんに言いつけられたらムカつくから、ウチらだってバレないようにこっそり痛めつけてやろうよ」
「ふっ……、どこに捨てるこれえ?」
「踏んづけてボロボロにしてからトイレに捨てちゃう?」
「あいつお嬢だから財布だけとっとこう」
いじめの手口が小学生以下。
泥棒と同じだし陰湿でタチが悪い。っていうか気持ち悪い。頭悪いんじゃないの?
そんなことしたら学校いられなくなんのはどっちだよ。
……何でまだこれ以上、川端さんを傷つけることするのかなー。
昨日だって、あのバカはあんたらの悪口なんか一個も言ってなかったよ。甘えてんなっつーの。
もし泣かれたら、慰めるのはきっと、私の役目になっちゃうってことを、こいつらは分かってない。
――そんな面倒くさいこと、防げるなら事前にどうにかしてやりたいに決まってる。
「――私も混ぜてよ」
階段を軽やかに下りて、二人の横に並んで川端さんの鞄を無理やり奪い取った。
……うん、よし。鞄はまだ無事。

